みんなの就職エピソード②

Bさんのエピソード

30代 男性 自閉症スペクトラム障害 工場勤務

■アステップにたどり着くまで
Bさんは高校卒業後、大学進学のため京都で一人暮らしをはじめました。大学では哲学を学び、8年かけて卒業しました。いよいよ就職活動を始めようとしましたが、今まで仕事の経験が1日もなく、また就職活動について教えてくれる人もいないため、自分ではどのように仕事を見つければよいのかと途方に暮れる日々を送っていました。

困り果てたBさんは、精神科のクリニックを受診。そこで「自閉症スペクトラム障害」という診断を受けます。「障害」という名前に強い抵抗を示していたBさんでしたが、就職のために渋々それを受け入れ、相談をしていた障害者就業・生活支援センターからアステップを紹介され、見学・1か月間の体験利用を経て、利用開始となりました。

■訓練開始から実習まで
いよいよ利用開始となったBさんですが、慣れない環境や人への緊張・不安が強く、アステップ内でもせき込む・えづくといった症状が出ることがありました。しかし、そういった困りごとが出るたびにアステップの担当スタッフに相談を行い、一つずつ問題を解決していくことができました。困ったときにすぐ相談できることは、Bさんのいちばんの強みです。

当初は週3日、午前中9時半~12時にて始めた訓練ですが、1年後には週5回、9時半~16時までフルで通所することが可能となりました。アステップ利用開始時には、「仕事といえば事務」というイメージしか持てていなかったのですが、清掃や梱包など様々な基本実習(週1~2回、2時間程度)を体験し、「自分には事務よりも同じこと繰り返す作業が向いている」と気付くことができました。また、同じように訓練を行う仲間が、障害を企業に伝えた上で就職する「オープン就労」を目指していることを知り、Bさんも障害者手帳を取得し、自身の障害特性と向き合っていく決心をしました。

■様々な職場体験実習
週5回のシフトで通うことができたBさん。自分に向いている仕事や環境を見つけることを次の目標とし製菓工場⇒スーパーでの野菜袋詰め⇒工場での網戸製造⇒配送会社での封入・仕分けといった様々な実習にチャレンジしました。さまざまなトラブルがありながらも、実習には1日たりとも休まず取り組み、その度に「一つのことを繰り返すのが得意」「何事にも全力で取り組む」「挨拶や報連相がしっかりできる」といった自分の強みを知り、「自分にもできることはある」と、就職への自信を深めていきました。

■中小企業での就職から職場定着
実習によって気付いた強み、そしてこまめに相談することが自分の長続きの秘訣と気付いたBさんは、中小企業での就職を目指すことに決めました。そこでCOCOネット(中小企業での障害者就労をすすめるネットワーク)を使い、機械部品を製造する工場での実習を1か月行いました。その働きぶりが認められ、3か月間のトライアル雇用に進み、そこでも上司からの信頼を勝ち取り、週20時間勤務での正式雇用となりました。

正式雇用となった後も、さまざまな不安から症状が出て苦しくなることはありますが、その度に企業の社長とアステップのスタッフとの3者面談を行い、悩みを解決しています。Bさんは今、正社員となり親御さんからの仕送りをもらわず自分で稼いだお金で生活することを目標に、日々努力を続けています。